セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
 青石兄に起こされて、私は、自分が眠りながら泣いていたことに気が付いた。

「あ……。」

 今のは、夢だ。ゲームの中の出来事を、夢に見ただけ――。
 現実の春名さんや使用人の皆は、あんな目で見てくることはない。


――でも、何でだろう。

 今も、胸のどこかが、たしかに痛む。まるで、さっきの夢の方が、現実だったかのように。
 破滅よりも何よりも辛いのは、きっと、身近な人からの糾弾だと思う。


「――色々と、ありがとうございました!」  

 別れ際、私は青石兄に、お礼を言った。


 青石兄のおかげでが解決し、春名さんが帰ってきてくれるのだから、いくら感謝をしてもしきれないし。
 なんだかんだ宮島まで来てくれたのも、地味に面倒見がいい。


「また、改めてお礼をしますね~。」

 青石兄は、またいつもの嫌味を返すかだろうと思った。


 なのに、なぜか青石兄は、こちらをじっと見て。「……分かった。」とだけ口にした。 
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