セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~

「詳しいことは、明日学校で話す。今日はあの男と顔を合わせないよう、先に帰った方がいい。
 ――こんなパーティーになって、すまない。」


 まだ、帰宅予定時間には早いけれど。たしかに、この状況で白鷗さんには会いたくないし、今日は本当に、帰った方が良いのだろう。
 私がそう言うと、皆も頷いた。

 詳しいことは、『明日の朝、生徒会室で』と約束をして、私たちは、テラスの先にある外階段の方に向かった。外はもう日も落ちて、真っ暗だ。


「――黒瀬。」

 階段を降りる直前、杵築に呼び止められた。

「?」

 振り返った瞬間、目があったと思う。


 なのに。

 杵築は、一瞬、言葉を詰まらせた後。「……気をつけて帰れよ。」とだけ付け加えて、それ以上何の説明もしなかった。

 帰れと言ったり、呼び止めたり。一体、何を考えているのだろう。


 結局、私たちは、この日、何が何やらよく分からないままに、パーティを中座することになったのだった。
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