セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
※※※※
私は、『お嬢さま』『お坊ちゃん』という生き物が大嫌いだ。
たまたま金持ちの家に生まれただけで、ぬくぬく育ち、偉そうに振る舞うガキンチョに、良い感情は抱けない。
これまでの勤め先では、極力、関わらないように努めてきた。
――けれど、黒瀬家のお嬢様は、何かが変だ。
赤ん坊なのに、全く泣かない、笑わない。
無表情のまま、高速ハイハイで、私の方に近づいてくる赤ん坊。
普通に 怖 か っ た。
あるときなんて。
私がキッチンでジュースを手にとると。
お嬢様はいきなり、カッと目を見開いた。
さらに、何かが乗り移ったかのように腕を振り回して、奇声をあげたかと思うと――。
バッと、私の足にしがみついてきた。
――うわああ!
私は思わず、お嬢様を蹴飛ばした。
けれど、それでもなお、この赤ん坊――お嬢様は泣くこともしなかった。表情ひとつ、変えることがない。
その様はまるで、最近見たホラー映画に出てきた、悪魔憑きの赤ん坊のようだ。
お嬢様を蹴りつけて以来。
お嬢様は私がどこにいても、何をしていても。高速ハイハイでピタッと後を付いて回るようになった。
あたかも、復讐する機会を狙っているかのように。
無視をしても、無視をしても。
能面のような顔で、じっと、私の顔を見つめてくる。
ただじっと、目を見開いて……。
――怖すぎるわ!
私は、近日中の辞職を考えた。
私は、『お嬢さま』『お坊ちゃん』という生き物が大嫌いだ。
たまたま金持ちの家に生まれただけで、ぬくぬく育ち、偉そうに振る舞うガキンチョに、良い感情は抱けない。
これまでの勤め先では、極力、関わらないように努めてきた。
――けれど、黒瀬家のお嬢様は、何かが変だ。
赤ん坊なのに、全く泣かない、笑わない。
無表情のまま、高速ハイハイで、私の方に近づいてくる赤ん坊。
普通に 怖 か っ た。
あるときなんて。
私がキッチンでジュースを手にとると。
お嬢様はいきなり、カッと目を見開いた。
さらに、何かが乗り移ったかのように腕を振り回して、奇声をあげたかと思うと――。
バッと、私の足にしがみついてきた。
――うわああ!
私は思わず、お嬢様を蹴飛ばした。
けれど、それでもなお、この赤ん坊――お嬢様は泣くこともしなかった。表情ひとつ、変えることがない。
その様はまるで、最近見たホラー映画に出てきた、悪魔憑きの赤ん坊のようだ。
お嬢様を蹴りつけて以来。
お嬢様は私がどこにいても、何をしていても。高速ハイハイでピタッと後を付いて回るようになった。
あたかも、復讐する機会を狙っているかのように。
無視をしても、無視をしても。
能面のような顔で、じっと、私の顔を見つめてくる。
ただじっと、目を見開いて……。
――怖すぎるわ!
私は、近日中の辞職を考えた。