セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~

1歳 ~まずは使用人と仲良く~


 1歳になった。

 私の切実な訴えが、ついに伝わったようで、遅まきながらも、離乳食が始められることになった。

 これでようやく、ミルク以外の食事ができる……! とテンションが上がったのは束の間のこと。


――まずい――。


 おかゆや野菜をグニャグニャにした離乳食は、使用人らの悪意を疑うほどに酷い味だった。その反面、果物やジュースなど、手を加えていない甘いものは、普通に美味しい。

 前世の記憶がなければ、私はきっと、甘いものばかりを食べたがったに違いない。


――けれども、私は知っている。


 人の脂肪細胞の数は、3歳までに決まるといわれている。太った悪役令嬢にならないためには、今の食生活が肝心なのだ!


 そのため、私は、どんなにまずい離乳食であっても好き嫌いをせず、絶対に完食するように努力した。

 また、私は、自宅内でできる自然な運動を、地道に実践し始めた。廊下の往復のような地味な運動も、毎日根気よく行えば、1歳児にとってはそれなりの運動量になる。


 さらに、私は将来のお肌のため、紫外線対策も始めてみた。
 ベビーベッドの柵から手を伸ばして、カーテンを閉めてみたり、昼寝をするとき、布団を頭にかけてみたり。

 どうか、未来の自分が、少しでも、マシな容姿になれますように……。 

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