セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
※※※※


 中等科と高等科の建物の入り口は、王明学園の正門から、桜並木を抜けた先にある。
 この桜並木は、ゲームのオープニング映像にも出てくるもので、ゲーム製作者の気合が伝わってくるような美しさだ。

 ヒロインは、入学時にこの桜並木に見とれながら歩いていたところ、偶然にも、後の生徒会長・杵築にぶつかってしまう。
 そのことがきっかけで杵築と知り合い、生徒会に出入りを始め、攻略対象者らとの関係を深めていくことになるのだ。

 それはまだ、3年も先の未来。


――本当にキレイだなあ……。


 桜が風に舞っている。
 その風と一緒にリボンがヒラヒラと飛ばされてきて、私の足元に落ちた。


「これ、あなたの?」

 私はリボンを拾い上げ、こちらを振り返っている女の子に手渡した。


「は、はい! ありがとうございます!」

 女の子は、1年生の名札を付けているけれど、見かけない顔だ。中等科から新たに入学した外部生なのかもしれない。


「私も1年なの。同じクラスだったら、よろしくね。」

 なるべく柔らかく言ったつもりだけれど。やはり、顔が怖かったのだろうか。


「すみません! こいつ、外部生なので何も分かってないんです。」

 連れと思われる男子生徒が、ダッシュで駆け寄ってきて、女の子の頭を押してお辞儀をさせた。

 そして、「いや、別に……、謝ることでは」と続けようとした私の話を聞くこともなく、「失礼しました!!」と叫びながら、風のように女の子を連れ去ってしまった。


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