セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
第三章 中等科編

12歳 〜周囲に溶けこもう〜


 12歳。私は、中等科に進学した。

 進学による大きな変化――、それは制服である。

 王明学園中等科女子の制服は、『可愛い』と『ダサい』の中間をいく。保護者の支持はあるが、在校生の評判は芳しくない。

 夏は、紺の吊りスカートの上に白セーラー、冬は、紺の吊りスカートの上に紺のセーラー。
 可愛い子が着こなせば、ちょっとクラシカルな雰囲気で可愛くも見える。逆に、無頓着に着こなせば、どこまでもダサく見えてしまう。


 ゲームにおいても、中等科時代の回想シーンで、この制服を見かけたことがある。
 黒瀬百佳は、はっきり言って、かなりダサかった。
 
 校則違反の化粧をして、ピアスもつけているクセに、スカート丈だけは、校則通りに膝下3センチ。そこは守るんかーい!

 古風なセーラー服に、長いスカート、目つきの悪さと態度のデカさ、ロングヘアの髪型……。はい、どう見てもスケバンですね。棒でも持ったら似合いそう。


 明らかに方向性を誤っていたゲームの中の黒瀬百佳を反面教師に、私は、周囲から浮かないような着こなしを考えた。

 まず、スカートは、皆と同じくらいの膝上丈に。
 目立つメイクはしない代わりに、肌のお手入れはきっちりと。まつ毛にはビューラーをして、きつい三角眉は緩やかに形を整える。
 髪は緩く束ねて、サイドに流そう。

 長年のカロリーコントロールのおかげで、体重も至って平均的だ。


――よし、完璧! 


 これで、良くも悪くも目立たない。どこにでも溶け込める、ごく普通の中学生になったと思う。――表情がないことにだけ、目を瞑れば。


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