セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
 私は、ソファの上の小窓から顔半分だけを覗かせて、音の方を見下ろした。

 すると、控室の真下の外壁あたりで、数人で誰かを取り囲む男子生徒の一人と、目があった。


「ひぃ……っ。」

 目があった生徒は、化け物を見たかのような顔で、飛び退いた。つられるように上を見上げた他の生徒も、「ひぃっ」と後ずさり。

 すぐに踵を返して走り去って行った。

 後には、もっさりした頭の男子生徒一人だけが残り、じっと立ち尽くしている。俯いているのか、上からでは、全く顔が見えない。


「……?」

 何が起こったのか、よく分からないけれど、とりあえず静かになったので、良しとしようか。

 ことなかれ主義の私は、何事もなかったかのように窓を閉めようとした。――そのとき。


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