セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
――ああ。
 こんなに真っ直ぐに人の目を見るのは、いつぶりだろう。


「……すごく素敵だから。自信をもっていいと思う。」 


 彼女は、照れるように言った。
 そして、窓が閉められたその後には、雲ひとつない青い空が、とても眩しく感じられる。


――彼女が言うとおりだ。


 喋るのが上手いとか下手とか、そんなことは、本当はどうだって良かった。問題は、いつも前髪をおろし、俯いていた俺自身だったんだ。

 
 深い意味はないと分かっていても。
 彼女に素敵だと言われたことが、素直に嬉しかった。
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