オレンジ服のヒーローの一途な愛
「ある意味、お前は俺よりあおいのことを思ってるよ。あおいを守りたくて救急救命士目指したんだろ?」
「…まあ」

恥ずかしくて曖昧に濁した。
あおいを守りたいという気持ちはずっと根底にある。
進路を選択するときに、それがきっかけになったのは間違いない。

「だけど俺は今、大樹の言う通り危険な仕事をしてるし、災害時も家庭より被災地優先だ。あおいをいつも守れるわけじゃない。そんな男が妹と付き合ったら嫌じゃないか?」
「だからあ、そこで俺がかっこよく登場するんだよ」
「は?」
「俺とお前、二勤交代であおいを守ればいいじゃん?あおいの俺に対する株も上がるし、サイコーじゃん」

親指をグッと立て、清々しく歯を見せる大樹。
…二勤交代?妹からの株を上げる?

「…大樹、一生結婚できない気がする」
「は?なんでだよ!失恋したての親友の傷口に塩を塗るなよお」
「あ、悪い」

せっかくおさまってきていたのに、また大樹は泣き出してしまった。
ため息を吐きながら、あおいの部屋のドアに目をやる。
…告白、か。
あおいにとって兄以上の存在になれたらいいと思うが、関係性が壊れるのはやっぱり怖い。
大樹が間に入ってくれても、今まで通りというわけにはいかないだろう。
だけど、他の男とうまくいってそれを目の当たりにするのは耐えられない。
結婚するなんて言われた日には、大樹と共に心臓麻痺で病院送りだ。

…やっぱり俺は、この気持ちを伝えなければ後悔する。

「俺も少し飲もうかな」

今の気持ちに勢いをつけようと、500mlのビールの缶を手に取る。
この量で一缶だけなら、勤務時間までにアルコールは完全に抜けるはずだ。
普段飲むことのない生ビールを喉に注ぎ込むと、口内に広がる苦味がやけに沁みた。

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