オレンジ服のヒーローの一途な愛
「めでたく両思いなんだし、あおいを一人暮らしさせるのはやっぱり心配だからな。あ、でも俺ここの近くに住むぞ?ニ勤交代であおいを守らなきゃいけないから」
「それはいざってとき俺も安心だけど、あおいにかまけてばかりでまた彼女に捨てられるなよ?」
「おいっ縁起でもないこと言うなっ」
「ニ勤交代…?」

全く意味がわからず、私はただ首を傾げるしかない。

「あおい、なんかあったらすぐ言えよ?俺が翔太を成敗しに駆けつけるからな」
「え、うん…」
「翔太、あおいにおかしなことしたらただじゃおかねえぞ?」
「おかしなことってなんだよ」
「あんなことやこんなことだよ」
「するだろ。恋人同士なんだから」
「うわーやめろ!想像したくない!」

兄は頭を抱えて大袈裟に悶える。
私はただぽかんとそれを見ていた。

「とりあえず、俺これから彼女とデート!ついでに不動産めぐってくる!じゃあなっ」

饒舌な兄は鼻歌を歌いながら玄関を出て行った。
残された私と翔ちゃんは、一気に静かになった部屋でため息を吐く。

「とりあえず丸くおさまってよかったな」
「今回の失恋はだいぶへこんでたもんね。すごく好きだったんだろうなって思ってたから、より戻せてよかったね」
「そうだな」

私に顔を向けた翔ちゃんが、なぜか私をじっと見つめる。

「どうしたの?」
「体調はもう万全なんだよな?」
「え、うん」
「じゃあ、あんなことやこんなことをしようか」
「え?…ひゃっ!」

普段鍛えている彼には軽々と身体を持ち上げられてしまい、当然のように寝室へ運ばれる。

「し、翔ちゃんっ!?待って!」
「無理。待てない」
「まだ昼間だよっ?それに、当番明けで眠いでしょ?」
「抱かずに寝られるわけないだろ。何年我慢したと思ってるんだ」

キュンと胸が鳴り、言葉が出て来なくなる。

ベッドに私をおろし、上に跨った翔ちゃんがじれったそうにシャツを脱ぐ。
厚い胸板。固く盛り上がった上腕。腹筋は見事なまでのシックスパック。
不摂生でたるんでいる兄とは大違いのパーフェクトボディに、胸が高鳴っていく。

「あ、あの、私、初めてだから…」
「わかってるよ、大丈夫」

翔ちゃんの言葉に安堵したのもつかの間、どう考えても初心者向けではない熱いキスに、頭も体も甘く蕩かされていく。
そのまま私は、未知の世界へと誘われていった。

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