悪役令嬢に転生したらクズ皇太子も転生者でした!?~思わない四角関係に困っています~

第三章・転生したのは自分だけではないようです。

 それから数日後。
 何も発展しないままラファエルとのお茶をする日になってしまった。
 毎週一回は、婚約者としての立場を考えて親交を深めるのが目的としてお茶する事になっている。
 あまりにも進展がないから皇帝陛下から王命として命じられてしまった。
 皇族からの命令では断る事も出来ない。本当は欠席でいいのに。

(皇帝陛下も皇后陛下も余計な事をしてくれるわね。そもそも親交を深めるにしても、アイツは無言じゃん)

 現在、皇宮の庭でエイミーとしての萌はラファエルとアフタヌーンティーをしている。だが、目の前に居る男・ラファエルは無言のまま横を向いてティーカップに入ってある紅茶を口に付けているだけだった。
 エイミーとは会話どころか目を合わせる気もないようだ。
 昔はそれでも嫌味の1つや2つは言ってきたり、自慢してくる可愛さはあったが、今は微塵もない。ただ時間だけが過ぎていく。
 長くて十分。さっさと紅茶を飲み干すと席を立つ。そのため強制終了になってしまう。その繰り返しだ。
 これでは、お茶をする意味すらないのでは? と思えてくるように。
 今日も顔色を一つ変えることもなく飲み干すと席を立とうとする。萌はそれを見てティーカップを持っていた右手が怒りでガタガタと小刻みに震えていた。

(このままティーカップに入っている紅茶を顔面にぶっかけてやろうか?)

 と思った。そりゃあ、大好きなアンジェリアではなく大嫌いな悪役令嬢のエイミーと、お茶をするのが嫌なのは分かる。ガッカリだろう。
 だけど、それならこっちだって嫌だ。エイミーはラファエルが好きだったかもしれないが、萌はそうでもない。
 あんなクズの皇太子が相手をするぐらいなら、一生独身でもいいとさえ思う。お互い様なのに、あの態度はさすがに我慢の限界があるだろう。
 だが、思っていても結局は出来ないまま。萌はため息を吐きながら席を立つ。
 帰ろう……ここに居ても意味がない。
 すると一人のメイドが、こちらに来ると萌に声をかけてくる。

「この後に、応接間に来るようにと皇太子殿下から伝言です」
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