Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
16. 作戦会議

B・B・B・B………

バイブレーター音が鼓膜を震わせ、腫れぼったい瞼をなんとか持ち上げた。

椅子の上でバキバキに固くなった上体を起こして、そこがマンションの自室であることを確かめる。
机に向かったまま、寝落ちしちゃったみたい。

カーテンの隙間から洩れる光から察するに、結構いい時間……って、10時すぎっ!?

ノートにはりついたヨダレ跡を見下ろし、盛大に吐息をつく。
うわ、やっちゃった。

自己嫌悪に肩を落としながら、ペンやらノート、雑誌、新聞が散らばった机の上をお片付け。
その途中でスマホが目に入った。
メッセージが来てる。不動産屋から、午後の内見予約の確認だ。

そうそう、今日は2軒のアパートを見せてもらうことになってるんだよね。

まだ仕事が決まってないとはいえ、同時進行で目星だけはつけておきたいから――すぐ引っ越せるように。

心配なのは、採点が厳しくなってなかなか決まらなかったらどうしよう、ってこと。
何しろ今がこのマンションだからなぁ。

とにかく安全性を重視して、家賃が折り合えば高望みはしないこと。
心の中で繰り返し自分へ言い聞かせつつ“よろしくお願いします”、と返信した私は、眠気を飛ばすべくシャワーを浴びることにした。


バレンタインから数日、私は結構忙しく過ごしていた。

初めての転職活動――履歴書や職務経歴書の書き方から始まって、面接の回答練習をしたりとか、悪戦苦闘中――はもちろんのこと、合わせて部屋探しや、引っ越しのための片づけもしたり。

ただしもちろん、一番時間をかけているのは犯人探しだ。
そのことを考えている間だけは、彼がいない孤独を忘れられるから……。

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