Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
身体に、力が入らない。
顔に冷たい雫が当たり、ぼやけた視界に泣いている彼女が映る。
「やだ、やだよ、私、まだ火事のお礼、言えてな……っ!」
あぁ泣かないでくれ、茉莉花。
君に涙は似合わない。
「クロードさんっ!!」
彼女の叫び声が、急速に遠のいていく。
俺は……死ぬのか。
それもいいかもしれない。
どうせ、離婚の慰謝料という名目で財産のほとんどを彼女に譲るつもりだった。
今ここで俺が死ねば、俺が築いてきた財産は100パーセント、妻である彼女のものになる。まだ離婚届は出していないのだから。
彼女が浪費家の男を50人、100人侍らせようが、ビクともしない額だ。
彼女から父親を、当たり前の幸せを奪ってしまった、せめてもの償い。
金で償えるとは到底思えないが、ないよりはましだろう。
そして何より、これから先彼女があの笑顔を他の男に向け、愛し愛されるのを見なくて済む。
きっとそれは、あの男になるんだろうな……
「各務!! 各務、おいっ! わかるか!? 死ぬな!! 絶対死ぬんじゃないぞ!!」
……なぜだ。
なぜここであいつの声がするんだ?
ついに幻聴まで聞こえるようになったのか。