Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
あの夜、彼はちゃんと日付の変わる前には帰宅した。
「おやすみなさい」って挨拶した時も、いつも通りで……
心配することなんかないのかもしれない。
本当にただの友達で、キスしてるように見えたのは私のカン違いかもしれない。
さっさと聞いてしまえばスッキリするのに。
チキンな私は彼の返事が怖くて、毎回質問を飲み込んでしまう。
『は? 何言ってるんだ。愛人の一人や二人、社長なんだから当然だろ』
『むしろどうして茉莉花一人で俺が満足できると思ったんだ?』
『いちいち言わなくても、それくらい常識だと思ってたが』
あるいは。
『そうなんだ、結婚後に海外出張先で出会ってね。彼女こそ、俺の運命の女性だ』
『知ってるなら話は早い。すぐに離婚してくれ』
はぁああ……やっぱり聞けないよ。
「茉莉花――」
「ぁああのっ! 実はその、私、働いたら、ダメですか?」
返事に窮した私は、また別の話題を振ってみた。
これもずっと考えてたことには違いない。
速水さんとのやりとりのせい、ってわけじゃない。
ただ、彼からもらうばっかりの状況を変えたら、もう少し自分に自信が持てるような気がして。
「働く?」
意外な答えだったのか、彼はその目をわずかに見開いた。
「商社に戻るのか?」
「いえ、前の職場じゃなくて、少しだけ短期で……」
「短期で、どんな仕事を?」
「香ちゃん――友達の藤堂香ちゃんが働いてるホテル、シェルリーズホテルっていう所なんですけど、年末年始、ものすごく忙しいみたいで。お部屋のお掃除とか裏方の仕事、短期でも手伝ってくれたら助かるって言われてるんです。それでその――」
「ダメだ」