Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「……………」
ん?
あ、あれ?
キス、されない?
それらしい感触を何も感じないことに気づき、びくびくと瞼を持ち上げる。
すると――
「わかったか」
憮然とした声が言い、「イタっ!」
デコピンされた……痛い……
「押さえ込まれたら、どうしたって女の方が不利なんだ。逃げようがない」
冷静にそれだけ言って、密着していた身体はあっさり離れていく。
「容姿は関係ない。女ってだけで、襲われることもある。用心しておいて損はない」
あっけにとられた私は、頭の中でその前の会話を巻き戻し、ようやく納得した。
そうか、夜道は危険って話してたっけ。
どうやら警告したかっただけ、ってことみたい。
びっくりしたぁ……
キスされるかもって?
ないない。彼がそんなこと。
自意識過剰だよ。
“容姿は関係ない”。はいはい、その通りですね。
「わかりました。帰りは、ちゃんと連絡します」
自嘲気味に嗤いつつ、のろのろと上体を起こした。
彼はそんな私の頭をくしゃっとおざなりに撫でてから、「お休み」って言葉少なに立ち上がって。
そのまま返事も聞かずに、背を向け行ってしまう。
一人きりになった大きすぎるソファで、私は抱えた膝に顔を埋めた。
なかなか収まってくれない鼓動の余韻を、1人残された寂しさを、全身で感じながら。