三十路アイドルはじめます
「いや、実は私明日からの予定もよくわからないです。交代時間が午後2時だとだけ聞いてます。明日は午前9時にくるように言われたんですが、それ以降の予定もわかりません」

 私がそういうと、為末さんは引き出しを開けてシフト表を見つけ出してきた。
(他社の人なのに勝手に引き出しを開けて自由すぎる⋯⋯)

「ほら、シフト。今日辞めた子のところに梨田さんが入ると思いますよ。だから、それに合わせてお昼時に寄って良いですか?」

「為末さんと私ってランチをするような仲ですか? お昼を一緒に食べることで同じ会社の同僚と仲を深めたりした方が有意義だと思いますよ」

「今、一緒にランチ食べる相手がいなくて困ってるんですよ。奢るからさ、一緒にランチを食べましょうよ」
 社交的でイケメンのリア充にしか見えない彼が、ランチを一緒に食べる相手がいないようには見えない。
 しかし、「奢る」という言葉は金欠の私にとってはありがたい。
 それでも、彼が私に気があってこんな提案をしてくるのであれば最初に断っておくべきだと思った。

「私、もう恋愛はする気はないんです。それに元々年下って魅力を感じたことがありません。ただのランチ友達として私のこと見てくれているなら、ご一緒します」

 彼から、「お前の方が恋愛対象外だ!こっちから願い下げだ!」と罵倒されるかもしれない。
 それでも万が一こんな若い子が私に想いを寄せて、時間を無駄にしては申し訳がないと思った。

< 21 / 95 >

この作品をシェア

pagetop