恋愛相談を受けた俺たちは、互いに鈍感と天然に頭を悩されるのである

 そもそもなんとも思わない男子を女子から一緒に帰ろうなんていうはずがない。その辺を透はよくわかっていないみたいだ。

 佐原さんから直接聞いた訳ではないから断定はできないけど、それなりの好意を彼女も持っているはず。

 おそらく、二人はいわゆる両片想いというやつだ。
 なのに、どうしてこうも互いに気付かないのだろう。

 そのせいで、俺と仲の良い夏樹との繋がりに期待したんだろうな。

「だからさ、佐原さんが俺の事どう思ってるか百瀬さんにそれとなく聞いてくれねーかな?」

「いや、自分で聞きなよ」

「だってそんなの、俺が佐原さんの事好きだって言ってるようなもんじゃん」

 それ俺が聞いても同じなのでは?

 はぁ、仕方ない。ヒントくらいは与えてやるか。

「でも確か、佐原さん好きな人はいるって噂だけど?」

「は?」

 俺が勝手に相手の想いを伝えるのは間違っている。それなら、こう伝える事でいくら鈍い透でも気付くことはできるだろう。

「誰だよそれ!」

 えーと、これはダメだ。完全に火に油を注いでしまったみたいだ。

「と、透。落ち着いて」

 なんでそんな考えになるんだ。相当重症だなこの鈍感さは。

「放課後にいつも佐原さんと帰るのは透なんだからチャンスはあると思うよ」

 簡単に事を納めるはずが、ついフォローするような事を口にしてしまう。
 でも、自暴自棄にでもなってしまっては大変なので少なくともそういった事に走らないようにする義務が発端である俺にはあるのだ。

「だ、だよな。それに噂ってだけなんだろ?」

「そ、そうだよ。大丈夫だって」

 いや気付けよ。その好きな相手が自分だという可能性もあるかもしれないとどうして考えられないんだ。

「なぁ、春一は好きな人とかいないのか?」

「えっ」

「俺の相談に乗ってもらったんだ。俺だってお前の力になりたい」

 こんなにも好きな相手に一直線な透の後だ。
 俺もそれなりにきちんと答えてやらないとな。

「名前は教えられないけど。……いるよ、好きな人は」

「やっぱり……じゃなかった!」

「え?」

 気のせいか? 今やっぱりって言わなかった?

「だ、誰だよそれ!」

「言ったでしょ。名前は教えられないって」

 俺ももう高校二年生だ。とっくに好きな人だって出来ている。当然まだ付き合えてはいないけど、いつかは俺も透のように前向きに想いを伝えられたらと思っている意中の相手が一人いる。

「そ、そうか……」

 何だ。俺の答えを聞いてから透の様子がおかしい。

「あ、一応言っておくけど佐原さんじゃないから安心しろよ」

「っ! だよな! 良かったー。お前が相手だったらどうしようかと思ったぜ! あははっ!」

 やっぱり様子が少しおかしいような……。本当にその心配をしていたのかよ。

「んじゃ、日も暮れてきたし帰るわ」

「ん、相談にそこまで乗れなかったのにごめん」

「いいや、色々話せてスッキリしたよありがとな!」

 それを最後に透は俺よりも先に教室を出ていく。今日あった事を誰かに話すつもりはないけど、それとなく夏樹には二人のことについて話してみるか。
 俺もすぐに帰りの支度を済ませて教室を後にした。
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