恋愛相談を受けた俺たちは、互いに鈍感と天然に頭を悩されるのである
天然女子と放課後の図書室
私が図書室へ入ると、友人の栞が先に席へと着いていた。
「栞、お待たせ」
「夏樹! ごめんね、放課後にわざわざ」
佐原栞《さはらしおり》。高校から仲良くなった私の親友。
男友達の春一を除いた同姓の中では一番の私の友達である。
そんな彼女がわざわざ放課後に私を呼び出すなんて。きっとあの事に決まっている。
「いいよ。相談事があるんでしょ?」
「うん……。夏樹にしか相談できなくて」
わざわざ休館日である図書室を図書委員の特権を利用して開けてまで私に相談を持ちかけてきたって事は、それなりの理由のはず。
「それで、相談ってなに?」
私が向かい側の席に腰をかけて事の内容を栞に問う。
「あ、あのね。同じクラスの透君の事でなんだけど」
透君……。春一と仲の良い三木透《みきとおる》君の事だ。
そもそも栞から聞く男の子の話は彼の事ばかり。本人は最近まで黙っていたけど、随分前から私は栞が三木君の事を好きなのを知っていた。
だって、友達になったその日から一緒に帰ろうなんて誘うんだもん。
奥手で大人しい栞からしてみれば、すごく大胆な行動。だからすぐに三木君に好意を寄せている事がわかった。