恋愛相談を受けた俺たちは、互いに鈍感と天然に頭を悩されるのである

「いいよ。相談事があるんでしょ?」

「うん……。夏樹にしか相談できなくて」

 わざわざ休館日である図書室を図書委員の特権を利用して開けてまで私に相談を持ちかけてきたって事は、それなりの理由のはず。

「それで、相談ってなに?」

 私が向かい側の席に腰をかけて事の内容を栞に問う。

「あ、あのね。同じクラスの透君の事でなんだけど」

 透君……。春一と仲の良い三木透《みきとおる》君の事だ。
 そもそも栞から聞く男の子の話は彼の事ばかり。本人は最近まで黙っていたけど、随分前から私は栞が三木君の事を好きなのを知っていた。

 だって、友達になったその日から一緒に帰ろうなんて誘うんだもん。
 奥手で大人しい栞からしてみれば、すごく大胆な行動。だからすぐに三木君に好意を寄せている事がわかった。

「うん、三木君がどうかしたの?」

「透君って……。好きな人いるのかな?」

「え、どうして?」

「だ、だって。好きな人に好きな人がいるのかどうかはやっぱり知りたいよ」

 いや違うよ。私が言いたいのはなんで自分たちが両思いだって気付いてないんだろうって事なんだけど……。

 私の親友は、時折天然なところを見せるけど。その中でも恋愛に関しては断トツである。
 今が初恋だっていうのもあるんだけど、これは重症すぎるでしょ。

 それに絶対、三木君だって栞のこと好きだろうし。それは去年も今年も同じクラスだから、外から見てる私ですら気付いてる。

 たぶん、春一も気づいてるよね。二人の事……。一応、私たち四人とも同じクラスな訳だし。

「栞から直接聞けば良いんじゃない?」

「だ、駄目だよ!」

「どうして?」

「だって恥ずかしいもん。それに、もしいるって知ったら私、どうしたらいいか……」
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