夫に私を殺させる方法
 現代の我が国で、殺人を事故に見せかけるのは、かなり困難だと言われています。

 無数にある推理小説でも、犯人らは皆、華麗なトリックを繰り広げていますが、いずれも最後は名探偵に暴かれてしまいます。

 このお決まりのパターンに対し、私はいつも思っていました。

 下手な小細工をするから、バレるのです。
 どーんと、どこかに突き落として、事故か殺人か分からない――そういう状況であれば、故意が証明できない限り、無罪です。


 仮に私と夫の2人で鍾乳洞探検ツアーに申し込み、1人ずつしか進めない狭いポジションで、先を進む私が深い穴の方に突き落とされたら。私の命はないでしょうし、夫か突き落とした瞬間を目撃できる人もいないのです。


――これぞ完全犯罪!

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