夫に私を殺させる方法

Last Step. 二人のこれから

 それは、不思議な感覚でした。


 スローモーションで崩れていく足元。
 思い出す娘の顔。


『整備されていない、自然のままの洞窟ですから。端の方は崩れる危険があるので近付かないで下さい』

 インストラクターが説明していたその声が、今になって頭の中に響きます。


――ああ、死んだ……。


 そう思った瞬間、すっと意識が遠のきました。
 視界が暗転し、穏やかな闇が訪れる――



※※※※


――ことはありませんでした。


「マリ!!」
 夫の声が煩いからです。

「マリ! マリ!!」


――イタイイタイイタイ!
 主に夫が掴んでいる腕が。
 この人私の名前を知っていたんですね……。


――ん?

 私は不思議に思いました。
 何でこの人、私の側にいるんでしょう。


「マリ! 大丈夫か。」
 目を開けると、見たこともないほど、焦った夫の顔。
 どうやら、一緒に落ちてしまったようです。

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