処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
 このドレスを着ると、ちょっとだけテンションが上がる。自分を優雅で淑やかで豪勢な気分にさせてくれる。

「ねえ、リーク様」
「な、なんで…ございましょう」
「踊りませんか?」

 こうしてリビングでダンスが始まる。リークと私の動きはちょっとぎこちないが、それなりに形にはなっているように見える。

「~♪」
「こ、こうでしょうか?」
「ええ、そうでございます」

 時折歌を歌いながらリズムを刻んで踊る。踊っていると胸の中が軽くなっていくような気がする。
 後宮ではよく舞踏会が行われていた。普通の舞踏会も、仮面をつける仮面舞踏会もどちらもあった。

(懐かしい)

 靴は履いていないが、足音が当時の舞踏会を思い出させてくれるような気がしてきたのだった。
 一通り踊り明かすと、椅子に座って休憩する。

「ナターシャ様」
「なんでしょう?」
「紅茶はいかがですか?」
「いいですわね、飲みましょう」

 リークが紅茶を用意してくれるようだ。せっかくなのでティーセットもそれっぽいものにしよう。白い陶器のティーセットを水洗いして拭いてから紅茶を注ぐ。

「うん、良い香り」

 この家で飲むお茶よりも、高級感が漂っている。

「こういうのも、良いですね」

 リークも言葉遣いに慣れ始めてきたようだ。私は笑顔でそうですわね。と返す。

「ナターシャ様、昼食は何に…なさいますか?」
「そうですわね…」

 今、頭の中に浮かんでいるのはサンドイッチである。せっかくなのでアフタヌーンティーのようにしてみたいしスープも飲みたい。

「サンドイッチが食べてみたいですわね。あと温かいスープも」
「畏まりまして、ございます」
 
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