その生徒会、取扱注意につき!
第9話❥二人の確執
有紗と美心は無事に逃げて、生徒会メンバーに会えただろうか。それに白浪の他の生徒たちは大丈夫だろうか。
そんな不安がぐるぐると頭の中を駆け巡る。
南翔くんがいなくなってから、どのくらいの時間が経ったのだろう。
自分自身の体感としては、すでに三十分以上は経っている気がした。
スマホも没収されたうえ、閉じ込められている空き教室のカーテンは閉められ、室内は薄暗く、時計すらない。
そんな環境におかれているせいで、すっかり時間の感覚が狂ってしまっていた。
南翔くんがいない今が、逃げるチャンスなのに⋯⋯。
見張りは、部屋の中に一人と、入口付近に一人。
しかも、見張りの二人は、女一人だと油断しているのか気怠げにスマホをいじり、こちらに目を向けてもいなかった。
結束バンドで手を拘束されていても、この人数なら隙をついて、逃げられないこともない。
どうにかして逃げないと⋯⋯。
私が捕まっていることで、皆に、ううん、千歳に迷惑をかけちゃう。
南翔くんが去り際言った
「俺、千歳の絶望した顔が見たいんだ」
という言葉。
その瞬間、ゾクリと背筋に悪寒が走るのがわかった。
⋯⋯南翔くんのあの言葉、本気だった。
だって、ニヤリと笑う彼の表情はこの状況を心から楽しんでいるように見えたから――。
二人にいったいどんな因縁があるのか、私が知る由もない。けれど、とにかく南翔くんは、千歳に対して相当な恨みを抱いているようだ。
このまま何もせずに、手をこまねいているわけにはいかない。
そう考えたのと同時に私はおもむろに口を開いていた。
「⋯⋯ねぇ、私、ちょっと気分が悪くて⋯⋯。ポケットに入ってる薬を飲みたいんだけど、水か何かもらえない?」
意を決して、空き教室内に残った体育科の男子生徒に声をかける。
「は?薬?」
「そう。お願い」
「面倒くせぇなぁ。⋯⋯おい、お前持ってこい」
室内の男子生徒が、嫌そうに顔をしかめながら、入口に立つ男子生徒に指示を出す。
「あ、わかりました」
どうやら、入口付近にいる見張りの方が下っ端らしい。
そそくさと持ち場を離れる見張りの姿を横目で確認し、私は心の中でガッツポーズをした。
やった!
とりあえず、これでしばらくは見張りが一人。
逃げるなら、今しかないわね!
「ねぇ、ポケットに入ってる薬なんだけど⋯⋯。手を拘束されてるから取れないの。あなたが取ってくれない?」
手を拘束されたまま、その場に立ち上がった私は、執事服のズボンのポケットに視線をやる。
すると、
「⋯⋯いいぜ?俺が、取ってやるよ」
一瞬、驚いたように目を丸くした男子生徒。
しかし、次の瞬間、ニヤニヤとした下心満載の笑顔を張り付け、私の方に近寄ってきたのだ。
⋯⋯っ、我慢よ。立栞!
私の間合いに入るまでの辛抱だから。
ゾワッとした気持ち悪さを覚えながらも、なんとか我慢する。
そして、男子生徒が私の目の前に立ち、ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、ポケットのある私の太ももあたりに手を伸ばした刹那。
「⋯⋯っぐぇ」
一瞬の隙を見逃さず、男子生徒のみぞおちに膝蹴りを入れた。
みぞおちにクリーンヒットし、悶絶する男子生徒は、その場に崩れ落ちるように倒れる。
そんな不安がぐるぐると頭の中を駆け巡る。
南翔くんがいなくなってから、どのくらいの時間が経ったのだろう。
自分自身の体感としては、すでに三十分以上は経っている気がした。
スマホも没収されたうえ、閉じ込められている空き教室のカーテンは閉められ、室内は薄暗く、時計すらない。
そんな環境におかれているせいで、すっかり時間の感覚が狂ってしまっていた。
南翔くんがいない今が、逃げるチャンスなのに⋯⋯。
見張りは、部屋の中に一人と、入口付近に一人。
しかも、見張りの二人は、女一人だと油断しているのか気怠げにスマホをいじり、こちらに目を向けてもいなかった。
結束バンドで手を拘束されていても、この人数なら隙をついて、逃げられないこともない。
どうにかして逃げないと⋯⋯。
私が捕まっていることで、皆に、ううん、千歳に迷惑をかけちゃう。
南翔くんが去り際言った
「俺、千歳の絶望した顔が見たいんだ」
という言葉。
その瞬間、ゾクリと背筋に悪寒が走るのがわかった。
⋯⋯南翔くんのあの言葉、本気だった。
だって、ニヤリと笑う彼の表情はこの状況を心から楽しんでいるように見えたから――。
二人にいったいどんな因縁があるのか、私が知る由もない。けれど、とにかく南翔くんは、千歳に対して相当な恨みを抱いているようだ。
このまま何もせずに、手をこまねいているわけにはいかない。
そう考えたのと同時に私はおもむろに口を開いていた。
「⋯⋯ねぇ、私、ちょっと気分が悪くて⋯⋯。ポケットに入ってる薬を飲みたいんだけど、水か何かもらえない?」
意を決して、空き教室内に残った体育科の男子生徒に声をかける。
「は?薬?」
「そう。お願い」
「面倒くせぇなぁ。⋯⋯おい、お前持ってこい」
室内の男子生徒が、嫌そうに顔をしかめながら、入口に立つ男子生徒に指示を出す。
「あ、わかりました」
どうやら、入口付近にいる見張りの方が下っ端らしい。
そそくさと持ち場を離れる見張りの姿を横目で確認し、私は心の中でガッツポーズをした。
やった!
とりあえず、これでしばらくは見張りが一人。
逃げるなら、今しかないわね!
「ねぇ、ポケットに入ってる薬なんだけど⋯⋯。手を拘束されてるから取れないの。あなたが取ってくれない?」
手を拘束されたまま、その場に立ち上がった私は、執事服のズボンのポケットに視線をやる。
すると、
「⋯⋯いいぜ?俺が、取ってやるよ」
一瞬、驚いたように目を丸くした男子生徒。
しかし、次の瞬間、ニヤニヤとした下心満載の笑顔を張り付け、私の方に近寄ってきたのだ。
⋯⋯っ、我慢よ。立栞!
私の間合いに入るまでの辛抱だから。
ゾワッとした気持ち悪さを覚えながらも、なんとか我慢する。
そして、男子生徒が私の目の前に立ち、ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、ポケットのある私の太ももあたりに手を伸ばした刹那。
「⋯⋯っぐぇ」
一瞬の隙を見逃さず、男子生徒のみぞおちに膝蹴りを入れた。
みぞおちにクリーンヒットし、悶絶する男子生徒は、その場に崩れ落ちるように倒れる。