その生徒会、取扱注意につき!
第8話❥捕らわれた立栞〈有紗Side〉
「誰かっ⋯⋯」
私は息も絶え絶えにひたすらある場所を目指して廊下を走っていた。
きっと、ひどい顔をしていたんだと思う。
学祭で盛り上がっている黒涼の生徒達がギョッとしたような表情を私に向けているのがわかったから。
でも、そんなこと今はどうでもいい。
立栞を⋯⋯!
お願い、早く、誰かっ。
キョロキョロと自分の記憶を頼りに、必死に特進科のクラスを探す。
その時だった。
――ドンッ。
ちょうど廊下の角を曲がってきた人物にぶつかり、私は勢いよく尻もちをついた。
「ってぇな!お前、どこ見て歩いて⋯⋯って、あんた確か立栞の⋯⋯」
「君は、副会長の崎永さんだよね?1人でこんな所にいたら危ないよ。というか他のみんなは⋯⋯?」
その聞き覚えのある声にハッとして顔を上げると、そっくりな顔立ちの男子生徒が2人。
不思議そうな顔をして立っていた。
メイド服からすでに普通の制服に着替えており、おそらく私達の護衛に向かう途中だったのだろう。
探していた人物にようやく遭遇できた私は、彼等の顔を見た瞬間、我慢していた涙がポロポロ溢れ出していた。
「は?なんで泣くんだよ!?そんなにひどくぶつかってないって⋯⋯」
「史緒、ちょっと黙って。彼女様子が変だ。崎永さん、とりあえず落ち着いて。ゆっくりでいいから何があったか教えてくれる?」
ギョッとしたように私を見つめる金髪の彼をたしなめ、優しい口調で声をかけてくれたもう一人の彼に視線を向ける。
そして、意を決して口を開いた。
「⋯⋯っ、二人ともお願い。立栞を、助けて⋯⋯。あの子、私達を守って⋯⋯っ、体育科の人に連れて行かれたの。私、生徒会のみんなに知らせないとって」
さっきまで全力疾走をしてきたからか、思ったよりも大きな声が出ない。
それでも1秒でも早く二人に経緯が伝わるように一生懸命、言葉を紡いだ。
私の説明に一瞬、険しい表情になった2人。
「⋯⋯事情はわかったよ、崎永さん伝えに来てくれてありがとう⋯⋯。史緒」
「あぁ、わかってる。おい、そこのお前、特進科まで行って千歳たち呼んでこい。緊急事態って言えばわかるから」
「は、はいっ!わかりました!」
近くにいた男子生徒にそう指示を出した途端、金髪の彼は焦ったように廊下を走り出す。
そう、彼が向かう先は体育科がある第2校舎の方向だ。
「それで、崎永さん、他の白浪の生徒は大丈夫?」
「は、い⋯⋯。もう一人の⋯⋯美心と安全な場所に避難してますから」
小さく頷いた私の肩にポンッと手を置く彼は、私を安心させるように
「わかった。そっちにはすぐに人を向かわせるから心配しないで。あと、大丈夫。俺と史緒で立栞は必ず取り返すから」
最後にそれだけ言い残し、金髪の彼の背中を追って走り出した。
お願い、立栞。どうか無事でいて⋯⋯。
私はそんな彼等の背中を見送りながら心の中で、立栞の無事を祈り続けていた。