起きられないモーニングコール、眠れない夜カフェ。

きさくでグルメな吸血鬼

「いや、君は昨日……めちゃくちゃ酔っ払って、うちのカフェへとやって来たんだけど、ソファ席で眠ってしまったことは覚えてない? ここはね。あの店のすぐ上の二階。俺はここに住んでいるから」

 家から歩いて五分な近所で行きつけの夜カフェは、確かに高層ビルの一階にある。

 上層階って、住居用のマンションだったんだ。内装もやたらと豪華だし、賃貸だと家賃は高いだろうし、都内中央部の分譲ならば億ションなのかもしれない。

「昨夜の私がとんでもないご迷惑をおかけしたようで、本当に申し訳ありません……」

 これは、どう言ってお詫びして良いものか。客席で寝てしまうなんて、お店側からすると迷惑過ぎる客でしかない。

 ……しかも、私は今まで眠っていなかった様子の彼の棺桶を占領してて……って。ちょっと、待って。
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