月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 ぐるぐる考え込む間に寝てしまおうと、布団を頭から被った。

 紅くんに包まれたかのように錯覚した。


 紅くんが日暮組の討滅に行ってから2週間が経った。


 一応手紙で近況報告は受けているものの、声は聞けていない。

 もし電波ジャックされて、情報が漏れてしまったら困るからだ。

 そのせいでメールでのやり取りすらも出来ていない。

 ちゃんと計画通りに進んでいることがせめてもの救いだ。

 そばに紅くんがいないことは心細いけど、撫子と長春、鴾は残ってくれてよかった。それだけで再会前とは違うって分かるから。

 そして私はここ最近、雑念を振り払うべく護身術を習っている。

 護衛がいる限り使う機会はほぼないだろうけど、身につけておいて損はない。

 全く戦えないより自分の身は守れる方がいいもんね。

 適度な運動は健康にもいいし、一石二鳥だ。

 正直まだまだだけど、日に日に体力はついてきた気がする。

 今日も撫子に教えを乞うべく準備運動をしていると、まさかのお客さんがやって来た。



「茜ちゃーん。あーそーぼー」

「天ちゃん!?」



 玄関に行くと、護衛をぞろぞろと引き連れた天ちゃんが立っていた。
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