月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 鈴木真那が天涯孤独になり児童養護施設にやって来たのは中学2年生のとき。

 つまり3年前。

 その年に亡くなった且つ紅くんの婚約者だった人って─────。



「鈴木真那のお姉さんって、もしかして鈴井雛菜・・・?」

「何でそれも知ってんだよ」



 鈴木真那は苦しそうに顔を歪めた。

 そして自傷行為をするかのように言葉を繋いでいく。




「また月詠紅からか?さぞかし姉ちゃんのことを悪く言ったんだろうな。姉ちゃんに一回も会いに来ないぐらい冷血漢だもんな」



 一方的に紅くんを貶す発言に不快感を覚えた。

 さっき言った『何の罪もない』という言葉も引っかかる。



「ねぇ鈴木真那。裏社会の人間に拉致された子ってどうなるか知ってる?」

「いきなりなんだよ。・・・処理されるか売られるか拷問されるか監禁。咄嗟に思いつくのはこの4つだな」



 眉をひそめながらもちゃんと答えてくれるぐらいには鈴木真那もいい人だ。
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