月ノ蝶、赤縄を結ぶ



「この、小娘風情が・・・!」

「その小娘相手に余裕なくしてどうするの?」



 目の前で苦虫を噛み潰したような顔をする日暮千歳を真っ直ぐ見据えた。

 私を手にかけられないことがよっぽど悔しいらしい。

 しばらく沈黙が続いた後、退出を促された。






「ねぇ、あなたはどこまで知ってたの?」



 部屋に戻った途端、鈴井真那に疑問を投げかけた。



「どこまでって?」

「私のおじいちゃんが時峯藤治ってこととか」

「・・・それは知ってた。だから千歳さんの指示でお前に近づいたんだ」



 少し胸が痛んだ。

 それだけ『鈴木真那』に絆されていたらしい。



「じゃあ私と紅くんの関係は?」

「何となくは。でも嘘であって欲しかった」
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