月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 私も出来るよ!手伝えるよ!って言ったけど「今日は甘えん坊の日でしょ」と返されたので紅くんにおまかせすることにした。

 畳の上に布団を敷いて寝るなんて初めてだ。

 今日は初めてのことにたくさん遭遇する。

 だだっ広い檜風呂に入ったもの初めてだし湯船にゆったりと浸かったのも初めてだった。いつもは簡単にシャワーで済ませてるからね。

 紅くんの家の羽毛ぶとんはお日様の匂いがした。

 しかも肌触りがいい。



「おふとん、ふかふかだね!」

「そうだね」



 ルンルンしながら笑うと紅くんは肯定してくれた。

 もう寝る時間だよ、と言って紅くんは電気を消して、隣に敷かれた布団に潜った。



「おやすみなさい」

「うん。おやすみ」



 ここで会話は途切れた。

 チクタクと鳴る時計の音と雨音しか聞こえない。
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