月ノ蝶、赤縄を結ぶ
この日のことは10年経った今でも色褪せない、6歳のときの大切な想い出だ。
私を取り巻く環境は小学校に入学しても大して変わらなかった。
最初は仲良くしてくれていた子も、気づけば皆離れていった。
その原因は最近何となく分かるようになってきた。
私のお母さんが他の子のお父さんと仲がいいからだ。
仲良しなのはいいことなんじゃないかと思うけど、どうやら違うらしい。
お母さんが家にいる時間もだんだん減っていった。
今ではお惣菜パンかカップラーメンが家に常備されているだけで、まともな食事は給食でしか摂ることが出来ない。
周りからすればそれが異常らしく、私はいつもどこか違う世界線で生きているように感じていた。
この短い人生の中で優しくしてもらった記憶はたったひとつだけ。
紅くんとの想い出だ。
あれ以来紅くんとは会えていない。
そもそも小学生が中学生と会うこと自体、なかなか難しい。
小学生に上がりたての私にとって、行動範囲はせいぜい通学路ぐらいだったのだから。
中学校の場所すら知らない。