月ノ蝶、赤縄を結ぶ
「紅くんたちよりこわい人の方がたくさんいるよ。今日なんてわたしが男の子をたぶらかしたって女の子におこられたんだから!知らないよそんなの!」



 話している途中にだんだんと腹が立ってきて、ぽんぽんと叩く手に力が入りかけたので辞めた。

 代わりに首に腕を回す。



「勝手に決めつけておこってくるなんて怖いと思わない?」



 むすーっとしたまま紅くんに共感を求めると、神妙な面持ちで頷いてくれた。



「・・・確かに、それは怖いね」

「でしょ!」



 それからねー、と次々と不満を並べていく私を紅くんは微笑ましそうに見つめている。

 幼い私はその表情に時折哀しさや名残惜しさが混じることを完全に見落としていた。







 クリスマスは紅くんの家でケーキをたらふく食べ、お正月はお餅をついたり初詣に行った。

 年間行事を人と過ごすのは初めてで、魔法にかけられているようにずっとキラキラしていた。

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