月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 茜はいつもニコニコ笑いながら紅くんあれしよ!次はこれしよ!と話しかけてくる。

 そんな茜の無邪気さにあてられ、ついつい甘やかしていると、ある日一番付き合いの長い幹部に「若に大切な御方ができてよかったですね」と言われた。



 そうか。

 俺は茜が大切なのか。



 昔から感情の起伏が乏しかったから気づかなかった。



「紅くんいつもありがとう。だいすき!」



 お泊まりの日、茜が頬を紅潮させながら伝えてくれたとき、心に何か芽生えるのを感じた。



「・・・俺も好きだよ」



 気づいたら口にしていた。

 好きだなんて感情は初めて抱いた。

 茜はつくづく俺に初体験をさせる。


 この好きの意味は分からない。

 もしかしたら恋かもしれない。


 我ながらこんな小さな子に好意を抱くなんてイカれていると思う。
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