月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 これで茜とは終わりだと思った。

 身体が引き裂かれそうなほど辛いけど、それで茜が安全に生活できるならそれでいい。



「紅くん!いるんでしょ?ねぇ!ねぇ!!」



 来ちゃダメだって事情も踏まえてちゃんと言ったのに、茜は俺の家を訪れ続けた。

 いつも必死に俺の名前を呼んで、今日あった出来事を色々と話してくれた。


 別れを告げたのは俺だというのに、茜の声を聞いて落ち着いていた。


 裏では茜を拉致した奴らの正体を追っているが有力な情報が手に入らない。

 生け捕りにした奴らは雇われの身だったらしく、ろくな情報を持っていなかった。


 しかもこのタイミングで両親からの手紙が届かない。

 両親は毎月16日に報告書と俺宛の手紙を送ってくる。

 今までは忙しいときですら事前に「今月は手紙を送れない」と連絡があったはずなのに、今回は何も来ていない。

 もちろん電話も繋がらない。


 茜の拉致事件とも相まって胸騒ぎが治まらない。


 10月16日、まだ手紙が届かない。

 手先からじわじわと感覚が麻痺していく。
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