月ノ蝶、赤縄を結ぶ


 無事茜を助けられたが、次も上手くいくかどうかは分からない。

 俺にはそんな強さも権力も持っていない。

 それならばこれ以上茜が事件に巻き込まれる前に関係を絶つことが最善だと思った。


 だけど今日だけは────



「茜」

「なあに?」

「俺は茜が好きだよ」

「私も紅くんだいすき」



 ────俺を好きなままでいて。







「だから茜、もうここに来ちゃダメだよ。俺たち距離を置こう」



 自分で言い出したくせに喉を締め付けられたかのように息苦しくなった。

 必死に俺に縋ろうとする茜を見ると胸がズキズキと傷む。



「茜ならきっと俺以外にも好きな人ができるよ」



 そうなって欲しくないって思っているくせに口が勝手に動いて止まらなかった。
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