月ノ蝶、赤縄を結ぶ
それどころか俺らは優しいと言い、クラスの人達への不満を並べ始めた。
そっか。
茜にとっては俺らみたいなろくでなしだろうが、クラスメイトだろうが、そこら辺の通行人だろうが、みんな同じなんだ。
茜は色眼鏡など一切かけず、至極純粋な瞳で人を一人の人として平等に見ている。
茜のそういうところに俺はいつも救われていた。
俺だけに懐いてくれた可愛い可愛い女の子。
茜のことを思い返す度にその存在の大きさに驚かされる。
あれから色々な人と出会ったけれど、誰のことも可愛いだとか大切にしたいだとか思わなかった。
茜だけが俺にとって特別であり続ける。
目一杯優しくして甘やかして幸せにしたい。
ずっと笑っていて欲しい。
愛情表現もたくさんする。
もちろん茜が「いいよ」って言ってくれるまで一線は越えないように我慢するつもり。
与えられる好意を当たり前に享受して欲しい。
堪らなくなって15歳の誕生日に茜から貰ったハンカチをギュッと握りしめた。
茜と俺の関係を探られないように茜の私物は全て焼却処分したから残っているのはこれだけだ。