月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 でもそんな不安よりも強く茜を信じている自分がいる。

 だって茜が言ってくれたんだ。

「紅くんだけが、わたしのすきな人だよ」って。


 虚ろな目で校舎を眺めていると、とある女の子と目が合った。


 ────茜だ。


 すぐに分かった。

 だってあんなに可愛い子は他にいない。

 俺の心を揺さぶる唯一の存在。



「紅くん!!!」



 紫黒色のふわふわ髪をなびかせて、色素の薄い黒色の瞳に涙をためている。

 とても綺麗で見惚れてしまう。

 いつだって俺の目には、茜だけが色鮮やかに映る。



「会いたかったよ、紅くん。ずっと、ずっと」



 小さい頃と同じ────いやあの頃より強い温度で俺を呼んでくれる。


 可愛くてしょうがない。


 このとき俺はまた、茜に落ちた。
< 88 / 278 >

この作品をシェア

pagetop