月ノ蝶、赤縄を結ぶ
でもそんな不安よりも強く茜を信じている自分がいる。
だって茜が言ってくれたんだ。
「紅くんだけが、わたしのすきな人だよ」って。
虚ろな目で校舎を眺めていると、とある女の子と目が合った。
────茜だ。
すぐに分かった。
だってあんなに可愛い子は他にいない。
俺の心を揺さぶる唯一の存在。
「紅くん!!!」
紫黒色のふわふわ髪をなびかせて、色素の薄い黒色の瞳に涙をためている。
とても綺麗で見惚れてしまう。
いつだって俺の目には、茜だけが色鮮やかに映る。
「会いたかったよ、紅くん。ずっと、ずっと」
小さい頃と同じ────いやあの頃より強い温度で俺を呼んでくれる。
可愛くてしょうがない。
このとき俺はまた、茜に落ちた。