好きになってはいけない
 このシーツの感触も、ベッドの天蓋も、白く磨き上げられた床も、ガラスの張られていない窓も、高い石柱も、全てが日本とは違う。

 違う文化、違う国、そして、違う時代。

 なぜ、俺はこんなところにいるのだろう。

 何の因果で、こんなことに。

「すみません。一人にしてもらっても、いいですか」

 下を向いたままそう言うと、彼女は静かに一礼をして部屋を後にした。

 パタン、と扉が閉まると、一人の静けさが襲ってきて、急激に現実感が増大する。

 声にならない声が、唇から漏れた。

 ベッドに、俯せに倒れ込み、シーツを掴む。

 綺麗に張っていたシーツは、すぐに乱れ、皺が螺旋状に寄った。
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