ホウセンカ
長い講義がようやく終わったあと、真っ先にバッグからスマホを取り出す。
画面を見ると、浅尾さんから返信がきていた。時間は2分前。ついさっき。
『今日の午後、会えない?』
メッセージは、そのひと言だけだった。私は慌てて、隣の七海に声をかける。
「七海、きた」
「え、浅尾さん?」
メッセージを見せると、七海の目が輝いた。
「めっちゃタイミングいいじゃん!」
今日は予定されていた午後の授業がなくなってバイトも休みだから、学校が終わったら七海と渋谷へ遊びに行くことにしていた。
「でも、七海との予定が」
「なに言ってんの、そんなのいつでも行けるでしょ。浅尾さん優先!」
「だって寝不足なのに……」
「さっきより顔色いいし、血色がよく見えるメイクをしてあげるから」
「で、でも今日の服、変じゃない?」
「大丈夫! いつも通り、めっちゃかわいい。ほら早く、返事しなきゃ」
とりあえず、今日の授業は午前だけで午後は予定がないと返信すると、すぐに既読がついた。
『14時に渋谷でいい?』
どうしよう。変な汗かいてきた。
これって、デートなのかな。いや、付き合っていないのにデートって言うの? そもそも、初めてふたりで会うだけでそんなふうに思うのも変?
案の定、次の授業もまったく集中できないまま終わってしまった。今日はなにをしに学校へきたんだろう……少し自己嫌悪。
七海が綺麗にメイクをしてくれたおかげで、寝不足のひどい顔は少しマシになった。でも、もっとかわいい服を着てくればよかったと後悔している。こんなカジュアルなパーカーじゃなくて、フェミニンなカーディガンとか。
別に、浅尾さんのためじゃない。女の子はいつでも誰にでも、かわいく見られたいものでしょ。ただそれだけだし。
とはいえ、帰って着替える時間もない。仕方なく、そのまま渋谷へと向かった。
『ごめん。学校を出るのが遅くなって、20分ぐらい遅れそう。カフェでゆっくりしていて』
渋谷駅へ着く少し前、浅尾さんからメッセージがきた。「適当に店に入ってて」と言いそうなのに、カフェの場所まで添えてある。私が迷わないように気を遣ってくれたのかな。
浅尾さんが指定したカフェは、すごく分かりやすい場所にあった。そして静かすぎず、騒がしすぎず、ちょうどいい雑音が落ち着く雰囲気。
でも私は、そわそわしてまったく落ち着かない。何度もスマホと鏡を見て、コーヒーをひと口飲んでは店の入り口を見つめて。
早く来てほしいような、少しだけ怖いような。感情が忙しかった。
そしてすっかりコーヒーを飲み干してしまったとき、サングラスをかけた長身の男性がカフェに入ってきた。
画面を見ると、浅尾さんから返信がきていた。時間は2分前。ついさっき。
『今日の午後、会えない?』
メッセージは、そのひと言だけだった。私は慌てて、隣の七海に声をかける。
「七海、きた」
「え、浅尾さん?」
メッセージを見せると、七海の目が輝いた。
「めっちゃタイミングいいじゃん!」
今日は予定されていた午後の授業がなくなってバイトも休みだから、学校が終わったら七海と渋谷へ遊びに行くことにしていた。
「でも、七海との予定が」
「なに言ってんの、そんなのいつでも行けるでしょ。浅尾さん優先!」
「だって寝不足なのに……」
「さっきより顔色いいし、血色がよく見えるメイクをしてあげるから」
「で、でも今日の服、変じゃない?」
「大丈夫! いつも通り、めっちゃかわいい。ほら早く、返事しなきゃ」
とりあえず、今日の授業は午前だけで午後は予定がないと返信すると、すぐに既読がついた。
『14時に渋谷でいい?』
どうしよう。変な汗かいてきた。
これって、デートなのかな。いや、付き合っていないのにデートって言うの? そもそも、初めてふたりで会うだけでそんなふうに思うのも変?
案の定、次の授業もまったく集中できないまま終わってしまった。今日はなにをしに学校へきたんだろう……少し自己嫌悪。
七海が綺麗にメイクをしてくれたおかげで、寝不足のひどい顔は少しマシになった。でも、もっとかわいい服を着てくればよかったと後悔している。こんなカジュアルなパーカーじゃなくて、フェミニンなカーディガンとか。
別に、浅尾さんのためじゃない。女の子はいつでも誰にでも、かわいく見られたいものでしょ。ただそれだけだし。
とはいえ、帰って着替える時間もない。仕方なく、そのまま渋谷へと向かった。
『ごめん。学校を出るのが遅くなって、20分ぐらい遅れそう。カフェでゆっくりしていて』
渋谷駅へ着く少し前、浅尾さんからメッセージがきた。「適当に店に入ってて」と言いそうなのに、カフェの場所まで添えてある。私が迷わないように気を遣ってくれたのかな。
浅尾さんが指定したカフェは、すごく分かりやすい場所にあった。そして静かすぎず、騒がしすぎず、ちょうどいい雑音が落ち着く雰囲気。
でも私は、そわそわしてまったく落ち着かない。何度もスマホと鏡を見て、コーヒーをひと口飲んでは店の入り口を見つめて。
早く来てほしいような、少しだけ怖いような。感情が忙しかった。
そしてすっかりコーヒーを飲み干してしまったとき、サングラスをかけた長身の男性がカフェに入ってきた。