籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜
脱出 ― escape ―
コンコンッ


わたしが部屋で玲のことを考えていると、ドアがノックされた。

返事をすると、入ってきたのは裕一くん。


「美〜鳥サン!大丈夫っすか?」

「…大丈夫って?」

「聞きましたよ!顔にケガをしたとかって」


裕一くんは、大げさにも大きな救急箱を抱えていた。


「こんなの、ただの擦り傷だよ」


血が出ているわけでもないし、ほんの少しピンクになっているだけ。


「ダメっす!世話役としてちゃんと手当てするようにって、十座サンから言われてきたんですから!」


そう言って、ソファにいたわたしのところへやってくる裕一くん。


こんなわずかな傷に対して、裕一くんは綿に消毒液を染み込ませ、傷にやさしく押し当てる。


「痛くないっすか?」

「…うん、まったく」


そもそも、この傷すら痛くもない。
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