籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜
嫉妬 ― envy ―
『お前は十座さまの妃候補、俺はその世話役。俺たちの関係は、それ以外なにもない』


――あれから数週間。

あの日以来、玲はわたしに対して冷たくなった。


…いや。

これが本来の玲。


玲の看病としていっしょに部屋で過ごした時間は、今となってはまるで幻のように感じる。


玲は、明らかにわたしと距離を置くようになった。

あのときみたいに自分のことは語らなくなったし、会話といえば事務的なものだけ。


なにか玲に、…嫌われることでもしてしまっただろうか。


…もしかして、わたしがキスしたことが――。


『…か、勘違いしないで。玲が自分で水が飲めないから、わ…わたしがこうして飲ませるしかなかったから』


あれは、口移しで水を飲ませただけ。

…決してキスではない。


だけど、なにか思い当たることといえば、あれくらいしか――。
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