悠久の絃 2
兄ちゃんが食べ始めたのを確認して、ちょっといとの様子見てくる、とリビングを出ていとの部屋に入った。

さっきから、少しだけ嫌な違和感が纏わりついてくる。
何も無ければそれで万々歳。
採血の結果で少し気になった一項目。頼むから違ってくれ、と恐る恐る手のひらをいとの額に乗せた。


良かった、熱はなさそう。


そのまま頭を撫でて、いとの寝顔を見つめて。

可愛い。愛しい。守りたい。

いろんな感情が複雑に絡み合って、「だめだなぁ…」と苦笑いが浮かび上がる。
いとは自分の進路をどう考えているのかな。いつまで一緒にいてくれるかな。

高二の夏はもう志望学部も決まっている頃だと思うがまだ何も聞けていない。何かやりたいことがあれば、それを応援したいとは思うけど……

いとの知らないところで大きな話が動いてる、なんて、信じてくれるものなのか。



リビングに戻ると兄ちゃんはもう食べ終えていて、「少し話したい」と目の前に座るように指で指示を出した。


「なに?」


「悠、この一ヶ月の休職の間、提携してるクリニックでバイトしないか?」


「バイト!?していいの?」


「大祐と少し話してきたんだ。そしたら、クリニックなら当直もないし、バイトなら週に2、3くらいで出勤出来るから良いって。どうせ復帰したくてウズウズしてるんだろ?」


「うん、!」


「なら、行ってこい。大祐が紹介してくれるみたいだから、明日病院に顔出しに来いよ」


「わかった」



久しぶりに医師になれる!!
興奮している僕を横目に、兄ちゃんも少し微笑んだ気がした。

提携のクリニックということは桜庭の先輩がいるということだろう。
同期がまだまだ大学病院にいる分、クリニックで働くのは少し背伸びした気分になる。



「採血やルート確保だってできるし、地域医療も学べるいい機会だ。さすがに縫合はないと思うけどな」


「バレてたか、笑」


「バレバレだよ。部屋見たら模型あるし、グローブまでご丁寧に用意されてるし」


「鈍ってるかも、って思うと怖いんだよ。もし臨床を離れている間に穿刺が下手になったら、とか、呼吸音を聞き分けられなくなったら、とか。」


「まあ、要はリハビリだな。割と落ち着いてるって聞いてるし、一人ひとりじっくり診てこいよ」


「うん」
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悠久の絃の短編集兼、裏話集兼、番外編みたいな感じです。 ⚠️注意⚠️ 本編『悠久の絃』のネタバレを大いに含む話もあります。それでもいいよって方だけ読んでくださいネ。よろしくお願いします。 もしかするとリクエストもこちらに入れるかもしれないです。 もう、ほんっとうに交換日記みたいな感じです。毎回話のメインが変わります!!

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