冷酷総長は、今日も変わらず彼女を溺愛する。【After Story】
「ごめんなさい……でっでも彩夏ね、すっごく嬉しいことがあって、それをりとくんに早く言いたかったの」
「……」
嬉しいのか怒りたいのか分からない複雑な心境で黙ったままでいるおれの顔色を彩夏は蛇に睨まれた蛙のように縮こまって窺っている。
「……、何なの、嬉しいことって」
おれは素っ気なく聞いた。
彩夏はえっと驚いて今度はもじもじし始めた。
おれの頭の中は今「?」で埋め尽くされている。
「そ、それはね……その〜」
「なんだよ。言いたいことがあるならさっさと言え」
すると彩夏は座り込んだままだった床から勢いよく立ち上がり、おれの部屋から出ていってしまった。
おれはぽかんとしたまま、その場から立ち上がれもしないまま置き去り状態だ。
「りとくんっ!」
けれど彩夏はまたすぐに戻ってきて、両手を後ろに隠した状態でおれの前に立った。
「……何」
さっきから振り回されてばかりですっかりふてくされたおれは、無愛想にそう呟く。
「実はね、さっきお庭で遊んでたらね、庭師の佐々木さんに会ったの。それで、とっても綺麗な赤いバラをもらってね」
「あやか、……その、これ、りとくんにプレゼントしたくて」
彼女はそう言って後ろに隠していた手をおれのほうに向けた。