愛を教えて、キミ色に染めて【完】
「はあ……そういう辛気臭い顔止めろよ。気分が下がる」
「…………っ」
「あー気に入らねぇ! 本当苛つく女だ。何をやらせても使えねぇ。金の為とはいえ、とんだ貧乏くじだぜ」
「……ご、ごめんなさい……」
「俺、言ったよな? 役に立てねぇなら別の使い道考えるって」
「…………何を……」
「式まではようやく後二週間だ。それまでは、お前を家には帰さない。お前もそろそろ限界だろ? 逃げたいって思ってんだろ? それとも死にたいって思ってるか?」
「…………っ」
「まあ何でもいいけどよ、逃げられても死なれても困るから、式まではもうお前に自由を与えない事にした。それに、そろそろいいだろ? もうすぐ夫婦になるんだ、いい加減ヤラせろよ」
「……い、嫌っ! それだけは嫌っ! 役に、もっと役に立つから……だから、それだけは……っ」

 円香は首を横に振り、逃げようと颯から距離をとるけれど、颯もまた円香へ近づいて行く。

「そんなに嫌か? まあ、別に嫌がってもいいぜ? 無理矢理ってのも俺は嫌いじゃねぇし。平気だって、そのうち慣れる。慣れれば全てどうでも良くなる。そうなるような良い薬もあるからさぁ、そろそろ愉しもうぜ?」
「いらないっ! そんなのいらないっ! 貴方にそんな事されるくらいなら……死んだ方がマシです!!」

 そう叫びながら円香はテーブルに置かれた林檎の隣にある果物ナイフを手に取ると、

「こ、来ないで!! 近付かないで! それ以上近付いたら、私……」

 震える手でナイフを自身の首元にあてがいながら、颯に向かって言葉を放つ。

「止めとけって。そんな震えてんだ。どうせ手元狂って急所外れるから、変なとこ切って苦しいだけだぜ? お前みたいなお嬢様に、そんな事出来ねぇだろ?」
「出来ます! 貴方に好き勝手されるくらいなら、苦しんで死ぬ方がいい!」

 円香は後退りながら、ドア付近までやって来る。

「はぁ、随分嫌われたもんだなぁ。せっかく気持ちよくしてやろうと思ったのに、お前は俺の厚意を無下にした。それなら、お望み通り苦しませてやるよ。おい! 女を捕らえろ」

 颯のその言葉と共に円香がせを向けていた部屋のドアが開くと、二人の屈強な男が入って来た。

「え……」

 あまりに突然の事で動く事が出来なかった円香は一人の男にナイフを奪われると、みぞおちを殴られその場に崩れ落ちていく。

「けほっ、こほっ……」

 息苦しさと痛みで表情が歪む円香に近寄った颯は彼女の髪を掴み上げ、

「俺に逆らうから、こういう目に遭うんだ。よく覚えておけ。おい、この女を別館の地下室に入れておけ」
「うっ!」

 言いたい事だけ言うと、床に叩きつけるように掴んでいた髪を放し、その衝撃で円香は気を失ってしまうのだった。
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