《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
 神楽の望みは【弟か妹が欲しい】というものだった。

 約一ヶ月半前、突然弟か妹が欲しいと言い出した神楽。

 あれから特にそう言った事は口にしていなかったけれど、やっぱり心待ちにしていたんだと改めて知った私は、その思いにすぐに応えてあげられない事を申し訳なく思う。

 こればかりは授かりものなので、いくら私が欲しいと望んでもどうにもならない。

 それは分かっているけれど、こんなにも待ち望んでいる神楽を前にすると、どうにかしてあげたい気持ちになる。

「……神楽はきっと、俺が言った良い子にしてたらっていう言葉を守って、我侭も言わなかったんだ……。何だか悪い事しちゃったな……」
「……どうにか神楽の願い……叶えてあげたいね……」
「そうだね」

 その時、私はふとある事を思い出した。

 神楽が兄弟を欲しがった後から暫く、日常生活が忙しくなったり今回のクリスマスプレゼントの件があったりしていて忙しなく過ごしていた事もあってすっかり忘れていたけれど、思えば月のものが予定日から二週間くらい来ていなかった。

 元から少し不順なところもあったからそんなに気にはしていなかったけれど、もしかしたら……なんて希望が頭を過ぎる。

「亜夢、どうかした?」

 突然考え込む仕草をしていた私を心配した百瀬くんが声を掛けてくれたので、「百瀬くん、あのね――」と、今思っていた事を彼にも話した。

 ただ遅れているだけかもしれないけど、もしかしたらの可能性も十分にある。

 明日荒木田家へ行く前に病院に行って調べてみる事にした私は神楽が書いた手紙を持って百瀬くんと共に部屋を後にした。


 翌朝、目を覚ました神楽は図鑑の入った包みを持ちながらリビングへとやって来た。

「パパ、ママみて! プレゼントがあったよ!」
「え? 本当に?」
「良かったな、神楽。早速開けてみるといいよ」
「うん!」

 嬉しそうに包みを開けてプレゼントを目にした神楽は、「あー! ずかんだ! たくさんある! すげー!」なんて言いながら嬉しそうに図鑑を手に取って読み始めた。

 勿論、神楽の望んでいた物ではなかったけれど、文句も言わずに喜んでいる姿を見た私は、早く良い報告が出来たらいいなと思っていた。
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