愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
聖夜の願いはきっと叶う
「ねぇ神楽、サンタさんには何をお願いしたのか、ママに教えてくれない?」

 十二月の初め、世間ではハロウィンから一転してクリスマスムード一色へと変わっていき、私はクリスマスプレゼントの詮索を始めていた。

 神楽にそれとなく聞いても、「サンタさんに手紙を書くから」と言って教えては貰えず、それならばその手紙を見て欲しい物を知ろうと思ったのだけど、サンタさんにだけ見せると言って見せても貰えずにいた。

「なんでママにおしえないとダメなの?」
「ダメって事はないけど、何をお願いしたのか知りたいなって思って……」
「……おしえない、サンタさんにだけしか言わないもん」
「あ、神楽……」

 あまりにしつこいからか、神楽は頬を膨らませると怒って自分の部屋へ逃げて行ってしまった。

(……ダメか。ここは百瀬くんにお願いしてみよう)

 私はどうもこういう事を上手くやれない性格のようで、これ以上しつこく聞いてもますます教えてくれないと悟った私は百瀬くんにバトンタッチする事にした。


 その夜、帰宅して神楽と一緒にお風呂に入る百瀬くんにクリスマスプレゼントに頼んだ物を探って欲しいとお願いして二人を見送った私はいつも通り食事の支度を進めていた。

 そして、お風呂から上がった百瀬くんにどうだったのかを尋ねてみたけれど、

「ごめん、俺にも教えてくれなかったんだ」

 神楽は百瀬くんにも教える事を拒んだようで、欲しい物の探りを入れる事が出来なかった。


「神楽、何が欲しいんだろ……」
「最近これが欲しいとか言ったりしてないの?」
「うん。思えばここ最近はそういう事言うの、無くなったのよね……」
「けど、サンタ宛に手紙は書いたんだよね?」
「うん」
「それじゃあ、何か欲しい物はあるって事か……」

 少し前まではどこかに出掛けて欲しい物があれば、「あれ欲しい」「これ欲しい」と口にしていて欲しい物がすぐに分かったのだけど、最近そういう事を口にしなくなったせいで全く見当がつかない。

「そういえば、そのサンタ宛ての手紙は?」
「どこかにしまってあるみたいで、教えてくれないの」
「そっか……まあまだ時間はあるし、もう少し上手く探りを入れてみよう」
「そうだね」

 クリスマスまではまだ少し時間もあるので、ここは焦らずもう一度それとなく探りを入れてみようという事で神楽へのプレゼントの話は終わったのだけど、それ以降も神楽の欲しい物は一向に分からずじまいなままだった。
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