隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
「くっそ……!」

「ルーカス……」


 目に涙が滲み始める弟に、ルーカスは視線を合わせて両肩を掴み、言い聞かせる。


「……ヨルゴ。 大丈夫だ。 神様はちゃんと見ててくれている。 悪いことしたやつはちゃんとバチが当たるようにできてるんだ。 そうだ、川の魚取りに行こう。 もしかしたら途中の森で木の実を見つけられるかもしれないし。 な!」
 
「うん……」

 
 トンサニス王国の片田舎で数少ないレストランを営んでいた父と母は、先の戦争で店ごと死んだらしい。
 俺たちはしばらく教会がくれる数少ない食料でなんとか過ごしていたけど、その教会も戦争で何かを失った者たちの暴動に巻き込まれて潰れて、俺たちは身を寄せる場所を失った。
 毎日生き延びるだけでもやっとだった。 それでもルーカスは優しくて、まっすぐで、正しくあろうとしていた。

 そんな兄が損する姿をたくさん見てきていた俺は、この世で正しくあろうとすることが必ずしも正解ではないと、気付き始めていた。

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