隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

放課後バイト / side 酒々井優成


 青く光る読み取り部にスマートフォンをタッチして、前の人に続いて改札を抜けた。

 Bluetoothのイヤフォンを耳に入れ、今日クラスのやつにすすめられた音楽を聴きながら電車のホームに足を向ける。

 人がまばらに立つホームでは、無秩序に見えてちゃんと列があって、その最後尾になんとなく並んだ。

 ガシャガシャと鳴るドラム、うごめくベースにジャキジャキのギター。

 そこにのせられた癖の強い女の歌は、なんだかキレイな言葉ばっかりで、ちょっと胸焼けがした。

 このキレイさをそのまま受け止めて『いい曲だから聴いて』ってすすめてきたあいつの白い心そのもの、みたいで。

 煤まみれの自分が際立って醜いものに思えて、なんだか心を抉られた。

 曲が終わる頃にホームに滑り込んできた四角い箱の中へ、その他大勢と共に入る。

 車内はほぼ満員、他人との距離はほぼゼロ。

 この大半が俺の目的地でもある五駅先のターミナル駅で降りる。


 ……あ。

 痴漢しようとしてるやつがいる。

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