クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

……あぁ、だからか。
だから、さっきの先輩の声が頭から離れないんだ。


――家の前で待っておけばいいんですね?


私は、もうきっとどうしようもないくらい。
城ケ崎先輩のことが、大好きなんだ――


「う~っ、先輩ぃ……っ」


行かないで、私だけの先輩でいて――
そんな独占欲で頭が支配され再び涙が溢れた、

その時だった。

プルルと鳴ったのは、電話の着信音。

だけど一度だけ鳴った後、あっけなく切れてしまう。


「誰だろう……、――っ⁉」


ぼやけた視界に写る発信元は「見間違い?」って思うほど驚く人物で。

だけど涙を拭いてハッキリした視界でも、その人の名前は確かにあった。


【  着信履歴 : 城ケ崎 響希  】


「な、んで……っ」


ねぇ、どうして。
何でこのタイミングでかけてくるの?

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