君と奏でる世界は、虹色に輝いている。
冬を告げる肌寒い風を感じながら、帰路についた。
「ただいま」
部屋に入って、いつも通り写真の中の夏音に声をかける。
今日も彼女は穏やかに微笑んでいる。
「夏音、俺はどうしたらいい?」
そう呟いたその時、ジャケットのポケットに入れていたスマホが震えた。
表示された名前を見て、驚いた。
お互い番号を知ってはいたものの、一度も電話をしたことはなかったのに。
仕事のことで何か急用だろうか?
ためらいながらも電話に出ると、結音が今マンションのエントランスに来ているとのことだった。
半信半疑で電話を切ってエントランスホールに行くと、そこには本当に結音がいた。
「ごめんなさい。突然マンションに押し掛けて、迷惑ですよね……」
とりあえず部屋に案内すると、結音は申し訳なさそうに言った。
「いや。確かに突然で驚いたけど……」
迷惑ではない。
でも、わざわざここまで来て話したいことって何だろう?
「由弦さん、年内で音楽活動休止するって本当ですか?」
「……え……?」