君と奏でる世界は、虹色に輝いている。

「いや…ホントごめん。……これ、鈴原さんが持ってきてくれたの?」

「はい」

「そっか。ありがとう」

「どういたしまして。でも、なんか親近感わいちゃいました」

「え?」

私の言葉に、遠坂さんは意味がわからないというような表情になった。

「遠坂さんって、いつもクールに仕事こなしてる感じだから。眠くなって寝ちゃうこともあるんだなって思って」

「そりゃあ、俺も人間ですから」

「あはは。そうですよね」

ふたりで笑い合いながらも、私はさっき遠坂さんが口にしたカノンという言葉が気になっていた。

曲名じゃなくて誰かの名前なのかな?

もしかして、恋人の名前とか……?

聞きたいけど、プライベートなことだし、失礼かな。

「じゃあ、明日に向けてもうひと頑張りしようか」

何事もなかったように明るく言った遠坂さんの様子を見て、やっぱり聞かない方がいいかもしれないと思った。

そして、最後のリハーサルが再開された。

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